文化部室雑談とは
文化部室雑談では、当社の社員が観聴きした映画や音楽や芝居などの娯楽文化を週一くらいのペースでご紹介しています。(本記事は社員限定のウェブ社内報で配信している投稿を、社外向けにリライトしたものです。)
私、オルガ・ヘプナロヴァー(2016年)
チェコスロバキアで、23歳で絞首刑に処された実在の女性を描いた作品です。同国最後の女性死刑囚と言われているそうです。プラハの中心地で路面電車を待つ群衆にトラックで突っ込み、8人を死亡させた事件によって死刑に処されました。
ここまでの情報で、秋葉原通り魔事件(2008年)のことを思い出した方がいるかと思うのですが、私もその一人です。本作の事件は、1973年7月10日に発生しています。そんな昔、同じように凄惨な事件が発生していたのかと思うと、本作を観ていて気が滅入りました。
ソフト/クワイエット(2022年)
全編ワンショット!やら30分ロングショット!との触れ込みで、映画の予告を見かけることがあります。最近だと、ボイリング・ポイント/沸騰(2021年)、カメラを止めるな!(2017年)とかその辺です。その触れ込みって、個人的にまったく惹きつける要素にならないのですが、ビー・ガン監督の凱里ブルース(2015年)、ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ(2018年)を観た時に初めてロングショットの高揚を感じました。ヌルヌルサクサクした質感とでも言うんでしょうか。とにかく経験したことがない独特の触感がある映像なんです。
本作もそんな触れ込みだったのですが、結局、そんな事はどうでもよかった。実際の本質は、悪意描写でメンタルをひたすら削られる作品でした。白人至上主義による典型的な有色人種迫害と暴力が描かれていて、心底不愉快で苛立ちながら観ました。
ウトヤ島、7月22日(2018年)をご存じでしょうか。ウトヤ島~は、2011年7月22日にノルウェーのウトヤ島で起こった無差別銃乱射事件を映画化した作品です。凄惨な銃撃殺害シーンが、全編ワンショットで描かれています。本作の後味は、ウトヤ島~を観終わったそれと似ていました。
本作は、とにかくメンタル強度が必要な作品です。せっかくの余暇、そんなものに触れたくない、という方はさらっとスルーしてください。
M3GAN ミーガン(2023年)
いやー、めちゃめちゃ面白かったですねー。カテゴリとしては、ホラー映画と整理されるんでしょうけど、ホラー映画が苦手で観るのをスルーという考えの人がいるとしたら、考えをあらためて映画館に行きましょう。そんなにグロテスクでもないですし、楽しく観られると思います。
各国の広告比較で面白いツイートがありまして、似たような販促ポスター構図でも、日本だけミーガン(本作の主軸になっているAI搭載ロボット)に刃物を持たせているんですよ、つまりはそういったホラー感バイアスを狙っていると伺い知れます。でも、そんなにハードコアなホラーではないですよ、くどいですか。
それにしても気が利いてる映画でした。現代の社会問題に何気なく触れていて、ネグレクトをちらつかせています。とはいっても説教臭さを回避し、過去のホラー系やSF系の名作映画に対するオマージュに目配せしながら、キャッチーな娯楽映画になっています。AI搭載ロボットであるミーガンの佇まいは、子供や人形やロボットをモチーフにした過去のそれらをことごとく匂わせていて、そこも楽しく見られる要素だと感じました。
といった要素をつらつらと考えると、尚更良くできた娯楽映画だとの思いが反芻されます。上映されているうちに、ミーガンダンスをもう一度観に行きます。
了